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日本の株価は未だ高い

2002927

宇佐美 保

 「日経平均」が9000円を割らんとする今、これ以上の株価の下落を下げるべきと、日銀は銀行の保有株を買い上げようとしていたり(こんな事は禁じ手です)、経済評論家は“政府は強力な株価対策をすべし”と喚きたてたりしています。

おかしくはありませんか?

 

 何故、今以上に「日経平均」が下落してはいけないのですか?

どだい「日経平均」とは何なのですか?

株に関する本を開いて「日経平均」の解説を読むと、「経済門外漢の私」には、「文字は明快、意味不明」の世界に引きずり込まれてしまいます。

 そこで、証券会社のカウンターに行き説明を求めてみましたが、少しベテランと思われる女性社員では、はっきり答えられませんでした。

そして、奥にいるスタッフに電話連絡して、パンフレットを探し出してくれました。

でもそこには、“東京証券取引所第1部上場銘柄のうち、代表的な225銘柄を対象として、対象銘柄の変更や権利落ちなどを修正して求めたものです。長い歴史を持ち、投資家に最も親しまれています。相場の流れが分かりやすい反面、採用銘柄が225銘柄と少ないので相場全体の動きが反映しにくいという欠点があります。又、株価の高い値嵩株の動きに左右されやすい特徴があります。”とありきたりの説明しか書いてありませんでした。

 

 こんなわけの分からない指数を、マスコミが騒ぎ立て、投資家は右往左往するのはおかしな現象です。

そこで、東証株価指数(TOPIX)が導入されたのではありませんか?

この係数には、分かりにくい「権利落ち」更には「ダウ倍率(基準日(1949516)以来の累積した係数)」などは除外されて、“東京証券取引所第1部上場全銘柄の時価総額(株価×上場株式数)を基準日(196814日)の時価総額で割り100を掛けた指標”が導入されているのです。

 

 なのに比較的単純明確なこちらは使われず、「日経平均」が使われます。

しかし、TOPIXが、913.95とあっても、この値(何しろ、基準日との比較値ですから)から現在の株価の真の実力を判断できません。

それよりも、現在の株価に真の実力を見るには、加重平均(単純平均でも前の二者よりはまし)が簡単です。

そして、何より明快なのは、「利回り」です。

これは小学校で”配当金と株の無償増資割り当てによって得る利益を、購入株格で割ったもの“と習いました。

新聞の東証株価指数欄を見ますと、1.29とあります。

実に単純です。銀行預金的に考えれば、利率が1.29%ということです。

 そして、小学校では、“会社の業績次第でその利回りは上下し、又、会社自体が倒産する危険性などもあるので、一般的には、株の利回りは、銀行預金より大であるのが一般的である。(今で言う、ハイリスク・ハイリターン)”と教わりました。

 

 この“利回り:1.29”が私達に発信してくれるメッセージは、“今の株価は、本来あるべき株価の45倍は高い”と言うことではありませんか!?

だって、ハイリスク・ハイリターンの金融商品に対して、一般常識から言えば、年利は、少なくとも、56%はあってしかるべきでしょう?

 

 従いまして、11日の株価の変動幅のほうが大きい位に、低い利回り(ハイリスク・ローリターン)の金融商品を、本来なら危険を冒して購入すべきではないのです。

 

 そこで、証券会社などは、表向きには、この「利回り」を口に出さず、わけの分からない「日経平均」で煙をまくのです。

 そして、社団法人「証券広報センター」発行の「株式投資の基礎知識」には、“株式投資の魅力”として、第1番に「値上がり益」をあげているのです。

勿論、証券会社の発行するパンフレットも同じです。

この「値上がり益」を重視するのは、いわゆる機関投資家なのです。

機関投資家は、「利回り」で稼ぐのではなく、「値動き」から派生する「値上がり益」で稼いでいるのです。

ですから、彼らにとっては、株価の安定は何より困るのです。

そこで、彼等は、あてにもならない政治家などの発言で株価がガタガタ動く事を期待し、又、仕組みもするのです。

そして、真面目な国の政府は「株価対策」には手を出さないのです。

出すべきではないのです。

真面目な投資家も、そんなものに目を眩まされては本来いけないのです。

 

 “株価や、土地の値段が下がっていて問題だ、デフレだデフレだ!インフレターゲットを設定しろ!”と、いんちきな経済評論家たちは喚きますが、株価や土地は本来あるべき値段へと回帰しているのです。

物価だってそうです。

“日本の物価は世界一高い”と、一寸前まで問題にしていたではありませんか?!

 

 問題は、こんな性格の株を大量に抱え込んでしまう銀行等(そして、その幹部達)にあるのです。

株も土地も上がり続けると妄信していた「愚かな銀行幹部達」の責任なのです。

このような「阿呆で無責任な幹部」は早々に退陣すべきなのです。

そして、こんな輩を支えてきた「族議員」の責任なのです。

これらの輩、特に「族議員」の一掃こそが、先ず必要とされる景気対策なのです。

 

 更には、「論座2002.9」に、931月から2002年まで米上院予算委員会で補佐官(国家公務員)として勤務され、現在、経済産業研究所研究員の中林美恵子氏が、“米国の財政再建から日本が学ぶこと”との解説記事を次のように書かれておられます。

 筆者は今年春まで十年近く、米国議会でスタッフとして働いたが、米国はこの間、経済の持続的成長と財政再建の両方を達成した。一方、日本の過去十年を振り返ると、景気刺激のために歳出を増やしても効果が薄かつたことは明らかだ

米上院予算委員会での公聴会や上院本会議でも、財政政策が景気回復に無力だと主張する場面では、しつこいほど日本の例が引き合いに出されたものだ

 どの国であれ、あらゆる政策問題は財政に置き換えることができる。高齢化社会、年金、医療、環境、安全保障、海外援助、金融、福祉、教育、犯罪対策、地方分権など政策の諸問題は、予算が必要なものがほとんどであり、財政と直結する。言い換えれば、予算を配分するにせよ削減するにせよ、財政とは国家のあり方を描く作業なのだ。日本の財政赤字は先進国中で最悪の水準にある。こうした状況がいつまでも続くと、政府は手足を縛られ、本当に必要とする政策を実行できなくなる恐れがある。

 米国だけでなく、財政バランスの健全化に成功した国は景気回復も実現させている。現実を見ても財政再建と景気回復は二律背反ではない。日本も両方を同時に解決することは不可能ではないはずだ。……             (下線処理は私が施しました)

 何故このようなアメリカの政策を日本は学ばずに、族議員の言いなりになってしまうのでしょうか?

 なんとしても、「族議員」を一掃しての政治改革が必要なのです。

アメリカの中枢部にも親しい小泉さん頑張ってください。

 

 

 

 

 

 

(補足)

 「利回り」「利回り」と書く私に、“株の評価は「PER」が正当”とのご意見もありましょう。

でも、結局はどちらで現状を分析しようと、同じ結論になります。

 

文芸春秋2001年5月号に神谷秀樹氏(ロバーツ・ミタニLLC会長 フランス国立ボンゼジョセ大学客員教授)は「それでも日本の株価は高すぎる」の中で、“株価をはかる世界基準は、株価収益率(PER)で、PERの適正な値は、歴史的に見て15倍”と書かれています。

そこで、日経のホームページから、「PER」を調べますと、“……株価を予想1株当たり利益(予想最終利益を発行済み株式数で割ったもの)で割って算出……”と書かれています。

式で書きますと、「PER」=(株価)/(予想1株当たり利益)

この「PER」のままでは、何の意味かが分かりにくいのですが、「PER」の分母と分子を引っくり返して、1/「PER」を考えるのです。

即ち、1/「PER」=(予想1株当たり利益)/(株価)

を考えてみると直ぐ分かります。

この値から、該当する会社が、株主が株価に対して支払った金額に対して何%位の利益を上げてくれるのかが分かるのです。

そして、その利益の中から、会社は株主に配当金を払うのです。

従って、「PER」の妥当値が、15ということは、1/「PER」の妥当値が、1156.67

この中から配当金が支払われます。

(会社の状況によっては、この6.7%を株主配当にまわさずに一部を設備投資などに回したりするでしょう)

ですから、最大、6.67%の利回りとなります。

このような事から分かりますように、「PER」も実質的には、利回りを問題にしているともいえるのです。

 

 例えば最近のトヨタの「PER」は、24.03倍とありますから、まだ、神谷秀樹氏の書かれる15倍より大きいのです。

(そして、1/「PER」は124.034.16% となります。)

一方配当金は、28円/年で、株価が3000円くらいですから、利回りは2830000.93%となっています。

 いずれを考えましても、トヨタの株価ですら割高なのです。

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